2018/02/08

エルネア王国の日々 192年24日まで その11

※プレイヤーキャラ視点の一人称小説という体です。
ほかの方のオスキツ国初期住民とイメージが違ってもご容赦ください。
また、これが日記の最後でどちらにせよ尻切れトンボですが、後味良く終わりたいなら23日だけ読むことをおすすめします。



 192年23日
 ついに決勝の日がやってきた。
 森で準備をしている時、はたと気がついた。
 あたしはどうやら剣を持つとどんどん斬り込んでいくことにかまけてしまうらしい。
 おかげで防御スキルは一向に上達していないのだ。
 ボスのところへは数え切れないほど到達しているというのに。
 探索を切り上げるとホセが来ていた。
 「いよいよ決勝だね、応援するよ」
 「ありがとう」
 「で、負けたら明日残念会のデートしようね」
 「優勝したら?」
 「そしたらお祝いデートだよ」
 「どっちにしろデートじゃない」
 「そういうこと。デート行こう、ダメかな?」
 最近気がついたこと、彼は涙を堪えてなくても目をウルウルさせることができる。
 「ダメじゃないよ。勝ったらあたしもお祝いしたいし」
 こうしてデートの約束をしてあたしは市場に向かった。
 そろそろポト芋を植えたいのだ。
 市場ではグラシアーヌと行き会った。
 「ちょうど良かった。はい、これ」
 差し出されたのはいむぐるみだった。
 ホセに初めて渡されたのもいむぐるみだったと懐かしい気持ちになる。
 「ありがとう、大事にする」
 「よかった。すごくお世話になったから何かお礼したいなって思ったのよ」
 「もしかして、もうお別れ?」
 「うん、そろそろこの国を出ようと思って」
 「そう、寂しくなる」
 「なに言ってるの、淋しいのはこっちよ」
 「そうか、ごめん」
 「今日、決勝戦に出るんでしょ? 頑張ってね」
 「ありがとう」
 トーナメント決勝の時間になってポツポツと雨が降り始めた。
 本降りにならない内にと試合はそそくさと行われた。
 あたしは自分の力を信じてみようと、お守り無しで戦うことにした。
 そのためか相手のガードが固く感じたが、それでも苦戦することなく優勝を掴んだ。
 その後の閉会式で、あたしとジュニアータは正式に騎士隊に迎えられた。
 複雑だったのは騎士用の席から観ていたアンテルム王子に真っ先に祝われたことだ。
 それくらいではめげず、さっそくあたしはホセに報告しに行った。
 途中でグラシアーヌやジゼルにも報告した。
 みんなすごく喜んでくれた。
 龍騎士の称号を持つオリンピア・バブーリンにも報告をした。
 魔銃師だが、サバサバとして入国当初のあたしにも分け隔てなく接してくれた人だ。
 「おめでとう。この調子で次はエルネア杯まで上がってらっしゃい」
 エルネア杯、王国の各武術組織で最も強い者たちが集い勇者を決める戦い。
 来年は四年に一度の白夜の年であり、そのエルネア杯が行われる年だと聞いている。
 そしてその勇者は国の護り龍と戦い、勝てば龍騎士の称号を得る。
 「まだ先のことまでは…。けれど、精進します」
 そう言って彼女を見送っていると、後ろからホセが呼ぶ声がした。
 「スカーレットちゃん!」
 「ホセ、何かあった?」
 「何かっていうか、これ」
 そう言ってホセが差し出したのは、またいむぐるみだった。
 「明日デートの時に渡そうと思ってたんだけど、やっぱり今日がいいかなって」
 「それでわざわざ追いかけて来たの?」
 「うん、まあ」
 「うれしい、ありがとう。前にもらったのも大事に持ってる。
  これも大切にするね」

 192年24日
 遺跡を探索してからデートに向かった。
 ホセはお祝いにと酒場でご馳走してくれた。
 それであたしは前から少し考えていたことを言ってみた。
 「あたしさ、いつも一人で探索するじゃない。
  でも、これから騎士になるなら、他の人と組まなきゃいけないかもしれない。
  人と一緒に探索ってしたことないから、どんなふうかやってみたいんだ。
  付いてきてくれない?」
 そう言うとホセは渋い顔をした。
 「僕、戦闘はあまり…」
 思った通りの反応だった。
 彼は基本的な能力値がかなり低い。
 特訓している子どもの方が強いくらいなのだ。
 「ホセが無理してあたしの探索について来てたのだって知ってる。
  それでも、ホセに来てほしい。一緒に潜りたい。
  プライベートな探索ができるのもあと少しだから」
 「そこまで言うなら、行こうか。でも、途中で帰るかも…」
 「それは構わない。人が隣りにいる探索を経験したいだけだから」
 あたし達は魔獣の森に向かった。
 最初の内こそホセも余裕な顔をしていたが、すぐに罠に掛かりだした。
 彼は数少ない罠をことごとく踏み抜いた。
 あたしが取りこぼした敵一体すら仕留められない彼を見てやっと気づいた。
 彼を魔獣の森で連れ回すのは間違っていたのだ。
 「これ以上進んだら足手まといになるだけだし、何より僕が一人で戻れなくなる。
  ごめんけど、体力に余裕のある今の内に離脱するよ」
 「あの、あたしこそごめん。回復薬いる?」
 答えはわかっていた。
 「ううん、帰るだけなら大丈夫だし。これ以上は回復もすぐ無駄になるよ」
 「わかった。ごめん」
 彼と別れてあたしはため息を吐いた。
 これで気まずくなったら申し訳ないと考える。

*****

改めまして、紅月です。
24日の途中でぶった切られた日記で申し訳ありませんが、これで全てです。
1年目で、即帰化してトーナメント出場、釣り名人になり、エナの子になり、光の花を見つけ優勝も掴む。
こんなことがあっていいのかと思ってしまいます。
スカーレットは本当に恵まれていました。
またプレイしてもこれほどうまくはいかないと思います。

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