ほかの方のオスキツ国初期住民とイメージが違ってもご容赦ください。
主人公の基本情報
○名前:スカーレット・ロス(ロスは名声の意)
○生年月日:186年1日(リセマラの原因)
○見た目:赤髪、つり目、引き結ばれた口元
○性格:クール
○設定:
他国の貴族の娘で、女性が騎士になれない国が嫌で家出した。
幼児期に助けてくれた騎士に憧れて、騎士を志している。
192年3日
ここが噂に聞いたエルネア王国…。女が騎士になれる国。自由な王国。
もう一人、この国で降りる旅人がいたらしく、先に立って行った。
よく見ると、何度か食堂で相席した人だった。
気になったのですかさず近づいて話しかける。
「おはよう」
「あら、おはよう」
旅人の名はジゼルといった。ジゼル・クアドラード。
水色の髪が褐色の肌に映える美しい女性だ。
「しばらく留まるのなら、その内また食事しません?」
「もちろん、いいよ」
こうした会話を交わし、彼女は店が開き始めた市場へと歩いていった。
本当は今すぐにでも探索に行きたいところだがと思った時、アナウンスが入った。
「朝の便で入国した方は、入国案内がありますので酒場にお越し下さい」
手続きだろうか? 酒場と言えば宿屋として旅人を受け入れている場所でもある。
どちらにせよ顔を出さないわけにはいかないだろう。
訪ねてみると、酒場はなかなか洒落た造りの建物だった。
褐色の肌をしたウィアラという女性が対応してくれる。
「おはよう、あなたも今朝着いた旅人ね。
ここまで歩いてきた感じ、どうだった? この国を気に入ってくれそうかしら?」
入国申請が受理された時点であなたは1年間の王国滞在が認められているわ。
2階に部屋は用意したから、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
「それと、まず渡しておくものがこれね、この国の住民台帳。
新しいカレンダーや交友関係リストもいるかしら?」
「いえ、結構です」
ウィアラさんはきびきびとよく動く。
それでいてこれまで何人もの旅人を迎え入れてきたであろう温かさを感じる。
不思議な女性だ。
「ところで、旅人には流儀の違う国から来る人も多いの。
あなたにも案内として一連のミッションを受けてもらうことになるわ。
さっそくだけど、構わないかしら」
「ええ、何でしょうか」
「いっぺんには覚えられないでしょうから一つずついくわね。まず―――」
それからしばらく、あれこれとウィアラさんの使いに走った。
ハーブを採ったり買い物をしたりといった雑用だ。
釣りを言い渡された時にはジゼルがちょうど宿屋にいたので、同行してもらった。
「ウィアラさんってミッションを与えるの楽しんでるんじゃないかしら」
ジゼルが釣り糸を垂らしながら言う。
「ジゼルさんもそう思いますか? わりと荒いですよね、人使い」
「でも、あの人、あなたに期待してるみたいよ」
「どういうこと?」
「うーん…そうだ、お腹空いてない?」
「あ、そういえば」
「あとで一緒に酒場でご飯食べましょ。その時に教えてあげる」
その後、約束通りジゼルと昼食を済ませると、ウィアラさんが話しかけてきた。
「ねえ、あなた武器もそこそこ使えるでしょ? 森の小道へ行ってみない?」
「あたしがですか?」
「他の旅人にはあえて勧めはしないのだけどね。
あなたはきっとこのミッションが向いていると思うわ」
つまり、ミッションの一環として探索をしろということだ。
「わかりました。ミッションを受けます」
「じゃあ、薬もいくつかあげるから行ってらっしゃい」
こうしてこの国での探索第一歩を、あたしは踏み出した。
ジゼルの酒場での内緒話を思い出す。
「定住の話、されたでしょう?」
「え、うん? でも、それは旅人としては1年しかいられないって…」
「ちがうちがう! そうだけど、支度金の話までいったんじゃない?」
「ああ、図書館の人から5000ビー必要だって言われたわ」
「それよ。その話は旅人みんながされてるわけじゃないわ。
それに普通は帰化申請書がいるけど、ウィアラさんからの紹介なら免除だそうよ。
スカーレットさんが期待されてる証拠よ」
「知らなかった」
「何の目的でここを訪れたのかはあえて訊かないわ。
でも、もし少しでもその気があるなら定住は決めた方がいいと思う」
森の小道の探索は、子どもでも許されている通り、とても楽だった。
にもかかわらず、ほとんど無傷で帰ったあたしをウィアラさんは褒めてくれた。
「探索もできるし、他人との交流にも問題なし。
そろそろ本格的に定住を考えてみてくれないかしら。
ミッションで手続きの費用も貯まったでしょう?」
「…なぜあたしにしきりに定住を勧めるのですか? ジゼルでは駄目なのですか?」
「あなたがこの国にとって特別な存在だからよ」
ウィアラさんはこともなげに答え、あたしを慌てさせた。
「あたしは今日ここに着いたばかりですよ?
特別ってそもそもどういうことですか?」
彼女はちらりと酒場の入り口を見た。
その瞳は今までの感情豊かなものではなかった。
夕方の中途半端な時間で、店内にはあたしとウィアラさんしかいない。
「正確には、あなたの血筋がこの国に特別な影響を与えるだろうということ。
それを見極めるためにわたしがここにいるのよ。」
「あなたは一体、何者なんですか?」
「あなたがここで結婚して、子どもでも産まれたら教えてあげるわ」
「……」
あたしが黙り込んでいると、ウィアラさんの顔つきが再び活気に満ちた。
「なぜエルネア王国へ?」
「女性でも騎士になれる国だと聞いて」
直前まで緊張していたにもかかわらず、するすると言葉が出る。
「あら、それなら急いで定住申請すれば今年のエントリーに間に合うかもよ。
来年はエントリーが無いから、早く騎士になりたいなら今がチャンスね」
その言葉であたしは決心した。
「ミアラさんのところへ行ってきます!」
ほどなくして、あたしはムーグの図書館で帰化の手続きを済ませたのだった。
ウィアラさんに報告するために魔銃師会を出ると、見覚えのある顔を見つけた。
「こんにちは。あの、昼間、薬師の森にいなかった?」
「え? ああ、確かに行ったよ。けど、君とは会ったことあるかなあ」
「いや、こっちが勝手に見かけただけ。その時は国民服じゃなかったし」
「もしかして、旅人だったの?
あ…じゃあ、キノコ採りしてたあの女の子は君? それなら覚えてるよ」
「初めまして、あたしはスカーレット」
「どうも、僕はホセ・コラールっていうんだ」
そう言って自己紹介する彼は、浅黒い肌に黒い髪、目鼻立ちもどこか異国風だ。
そして、あたしには懐かしさを抱かせる顔。
さすがに無いと思っても、訊かずにはいられなかった。
「いきなりだけど、家族に騎士をしている人はいない? それも、どこか他の国で」
突然の問いに彼は本当に驚いたようだ。
「えっ? いいや、うちは魔銃師の家系だから、騎士はいないな」
「そう…」
「うん…」
しばしの沈黙が流れる。
「ごめん、変なこと訊いて。またどこかで会えたらいいね」
そう言って逃げるようにその場を離れた。
あの人と再会するなんて考えたこともなかったし、こんな場所で会うはず無いのに。
ホセ・コラールはよく似ていた、あたしが騎士を志すきっかけをくれたあの人に。
「どうしたの?」
「…ジゼル」
「その服! もう手続きをしたのね。家はどこなの?」
「噴水通りの…D-2-3だって」
「よかったじゃない。でも、表情が暗いわ。何かあったの?」
「ううん。何でもない。それより、騎士選抜トーナメントにエントリーしなくちゃ」
「あら、騎士になるの? その様子だとずいぶん前から心は決まってたみたいね。
ウィアラさんもそういう雰囲気がわかったのかしら」
「それはどうだか……ねえ、ジゼルも帰化してみたら?」
「わたしも?! そうね、考えたこともなかったわ」
「あたしは住むことまで決めていたわけではないけど、最初の目的地がここだった。
旅を続けてきた人とは事情が違うから、とやかくは言えない。
でも、せっかく縁があったんだもの。大事にしたいとは思う」
「わかったわ。どうせ流れていく関係だからって今までは考えてた。
でも、あなたとは結構気が合ったし、たしかに離れがたい気もするわ。
どうするか今すぐには決められないけど、考えてみるわね」
通りすがったジゼルと交わした会話を思い出しながら、あたしは夜空を見上げた。
クールな子だと周りに言われてきた。
今まで、貴族の娘だからという理由で周囲と距離を置くように躾けられた。
騎士への憧れを隠すため、家族にも心を開くことはなかった。
でも、船旅の途中からジゼルと少しずつ話して打ち解けて、関係が心地よかった。
おそらく独身である若い男性と相対して話すことも、今日までほとんど無かった。
けれどそれも自然に振る舞えたし、構えずに話せるのは清々しかった。
あたしはこの国で変わるだろう。
船旅が新しい人生の第一歩だったとすれば、帰化は新しいあたしへの第一歩だ。
192年4日
今日は休日だ。
特別な職も無いあたしには何も変わらないけれど、新生活初日なので晴れやかだ。
朝から深い森に行ってみる。
今日は自分を思う存分に鍛えられるのだ。
いむいむパンを森の前でピクニック気分でかじる。
深い森は、しっかりとガードをすれば安定して最奥部まで制覇することができた。
昼近くに休憩しに戻ると、ジゼルが待っていた。
見慣れた顔なのに何か違和感がある。
「ジゼル、帰化したの?」
「ええ、わたしを気にかけてくれる人がいるんだもの。留まるのもいいかなって」
彼女がとても嬉しそうな顔をするので、あたしも胸が熱くなる。
なんだか目頭も熱くなったようだ。
「あらあら、何事にも動じませんってクールな人なのかと思ったら。
ハンカチ貸そうか?」
「ううん、大丈夫。それより、よく言われてきたこと当てられてびっくり」
「思ったことを言っただけよ。
ところで、ここで暮らすと思ったら欲が出てきちゃった。
いい人見つけたら紹介してくれない?」
突然の言葉に戸惑う。
「え、ええっと…エステバンって人が、この国のこと色々話してくれたかな。
あっ、でも結構若い人なんだけど、あたしと近い年齢だったと思う」
「そう…若いツバメもいいかもしれない」
「へっ? ジゼルってそんな感じなの?!」
「冗談よ。でも、スカーレットさんがそう言うのなら好青年なんでしょうね。
見かけたら話くらいはしてみようかしら」
そんな話をしていると、深い森を抜けてあたしを見つけ近づいてくる人がいた。
「あなたに用があるみたいよ。わたしは失礼するわね」
ちょっぴりにやにやして見えたのは気のせいではないだろう。
話しかけてきたのはホセ・コラールだった。
「あの、昨日はごめん。僕は気の利かない質だから、その、困らせてしまって」
思いもかけない言葉だった。
「ううん、昨日のはあたしが悪かった。あたしの事情を勝手に押しつけた」
「でも、君が思い詰めたように思ったのに、一言もかけてあげなかったんだ」
ここでごめんを繰り返していたらいつまでも問答は終わらなくなってしまいそうだ。
「ありがとう、色々考えてくれたその気持だけでうれしい」
見るまに彼の表情がぱあっと明るくなる。少し泣いているようだ。
「よかった。それで、あの、もしよかったら、僕と友だちになってくれないかな」
「そんなこと言わなくても、あたしたちはもう友だちだよ。よろしく」
「よろしく、ロスさん…じゃなくて、スカーレットさん」
晴れた春の空はすべてを爽やかに見守っている。
あたしの心も、新しく芽生えた友情も。
探索を続けるとこれまで以上に調子が良くなり、ガード無しでも楽に進めた。
一日森ごもりから戻ると、あたしは近衛騎士隊選抜トーナメントにエントリーした。
締め切りぎりぎりだったせいで残りは1枠しかなかった。
試合日程を見てあっと声を上げてしまった。
あたしの試合はトーナメント初日、明日だった。
*****
改めまして、紅月です。
最初のチュートリアルの表現など、できるだけ自然にするように当時苦心しました。
リセマラ中に各国の旦那様候補は決まっていて、ホセ君は本当に顔(と年齢)だけで決定。
旅人がさっと接点を持つきっかけは、思い出の人に似ていたというのが一番扱いやすいので採用しました。
帰化にエントリーに怒涛の2日間。
わたしは導きの蝶を全く使わないので、チュートリアル報酬とそれらを売って5000ビーを工面しました。
ここから何としてでもトーナメントを勝ち上がるための訓練の日々が続きます。
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