2018/02/15

「アメリカ」感想

ごきげんよう、紅月です。
ファミマのアップルパイがすごくおいしいので、おすすめしたい今日このごろ。

読了はまだですが、カフカの「アメリカ」の終盤から、感想です。



カフカといえば、グレゴール・ザムザが朝起きたら虫になっていたという「変身」があまりに有名です。
実はわたしは「変身」をまだ読んだことがありません。
先にこの「アメリカ」を読み始めました。
あらすじを見ると「カフカ的冒険小説」と評されています。

端的に感想を言わせてもらえば、この小説はリズムも良くおもしろいのですが、わたしは主人公にどうしても共感できません。
ドイツ生まれのカールという16歳の少年は、家の女中をしていた年上の女性に愛され、醜聞を懸念した両親によって故国を追われます。
アメリカにいる伯父に引き取られるも束の間、そこすらも追い出され、彼はあてもなく放浪することになります。
彼の道程は一難去ってまた一難という言葉がまさにぴったりと言えるでしょう。
身を落ち着けられそうな場所を見つけても、しばらくすると事件が彼から居場所を奪ってしまうのです。

しかし、それらの理由は理不尽な点もあればカールの自業自得とも見えかねない点も備えているのです。
わたしが分析するに、カール少年は勤勉でプライドが高く、そのくせ世間ずれしていないために考えが甘っちょろい人物です。
それらはもちろん若者の特権ではありましょう。

が、自分の行いと周囲を過大評価するのはいただけません。
真面目に取り組んでいるから、規則を守っているから、何かあった時に証言してくれる人間はいるはずだと彼は信じています。
善い行いを誰かは見てくれているものだとよく言われますが、それをあてになどできない、それが世の中だとわたしは思います。

そして、どこにでも勤勉な者を煙たがる人間はいるものです。
実はわたしも馬鹿正直な勤勉家だった時代があるのでよくわかるのですが、ただ真面目な人間が正当に評価されるのは非常に恵まれた一部の環境においてのみです。

少なくとも現代の日本において、アメリカは成果主義の象徴と言えるでしょうが、実際に世の中の大半は結果こそがすべてなのです。
つまり、すべてに全力を注いで取り組むのは非効率的で、要領の良い人間が省エネルギーで旨いところを全部持っていくのが世の常で、カール少年の身に降りかかった災難も彼が要領さえよければ躱しきれたかもしれない。
そんな感じが拭えないので、わたしは彼のやり方も、それによって歩む人生も好きになれないのです。

色々と書いてきましたが、作品自体は残ってきているだけあって魅力的なので、以上は一感想として流して実物にあたってもらえればよいと思います。

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